Paranoid Pikachu
小春日和のお天気に誘われてピカとお散歩に出かけた。 右手にはピカを抱いて、左手にはPi-KAを持って 僕の手はもういっぱいいっぱいなのでピチューは部屋でお留守番 ピカとボクは近くの公園で日向ぼっこを始めた。 良いお天気と昨日夜遅くまでやっていたゲームのせいでボクの頭はグラングラン ピカもチャァ〜とあくびをしている ちょっとだけ…ちょっとだけピカと一緒にお昼寝をしよう………… 「青木さん……青木さん?こんなところで寝ていると風邪を引きますよ……」 そんな声が聞こえてきて僕はお昼寝から目を覚ました 「ふぁー……どれくらい寝たのかな……」 さっきまで良いお天気だったのが今起きたらもう夕方、一番星が見え始めていた そういえば僕を起こしてくれたのは誰?声のしていた方を見たら竹田さんが立っていた 竹田さんは僕に色々なチャラい音楽を聞かせてくれる良い人だ。 今日も僕とピカを起こしてくれた、やっぱり竹田さんは良い人だ。 きっと竹田さんはモテなんだろうな 「竹田さん起こしてくれてありがとう」 「良い夢は見れました?でも一人で寝てたらちょっと危ないですよ…青木さん」 「うん、一人じゃないよピカと一緒だったの…あ…ピカも起こさないと……」 隣にいたピカの方を向くと、そこにいるはずのピカがいなかった 「あれ…?ぴか???」 「どうしたんですか?青木さん?」 「あのね…ピカがいないの……」 「ピカ?僕が青木さんに声をかけた時にはピカはいませんでしたよ」 ピカがいないなんてどうしよう…僕の目の前が急に真っ暗になってしまった 僕の誕生日に各務さん達がプレゼントしてくれて友達になったピカが…… 鬱寝も一緒、鬱氏も一緒、いつも一緒だったピカが…… 「竹田さん!僕ピカを探してくるね」 「待って青木さん僕も探すの手伝いますよ」 やっぱり竹田さんは良い人だ。僕達は色々な所を探して回ったけどピカはいなかった 念のためにと交番のおまわりさんのところにも行ったけど、ピカは届いていなかった。 僕はちょっと泣きそうになった。 「明日また一緒に探しましょう」 そう竹田さんが言ってくれたので、僕は泣くのを我慢した それでも次の日も、またその次の日も、ピカは見つからなかった…… ピカがいなくなって一週間がたった 僕の目の前は真っ暗になったままだった 各務さんが、新しいゲームを買ったからと誘ってくれても遊べなかったし 雪男さんやマサムネさんが、面白いお話してくれても、ピカと一緒に笑えないので悲しくなった ピカはもう帰ってこないのかなぁ……どうしてピカはいなくなっちゃったんだろう。 僕のことが嫌いになって、僕と一緒にいるのが嫌になっちゃったのかなあ 毎日そんなことを考えていて毎日鬱氏していた。 ピカがいないと寂しいよう寂しいよう。 コンコンとドアをノックする音が聞こえた ドアを開けるとそこには竹田さんが立っていた。 「どうしたの竹田さん?」 「ちょっと僕と一緒に来てくれませんか?」 竹田さんの後をついていくと、竹田さんはこの前の公園に僕を連れてきた 「天気が良いからちょっと日向ぼっこをしましょう青木さん」 そう言ってベンチに腰掛けたので僕も隣に座る ここでお昼寝しなければピカはいなくならなかったのかなあ そう考えたら僕の目の前がまた真っ暗になりそうだった その時竹田さんがいつもの静かな口調で話し始めた。 「僕はね青木さんのピカがどうしていなくなったのかずっと考えていたんです。  ピカはねもっとピカが必要な子のところに会いに行ったんじゃないかなあって」 「ピカが必要な子のところへ?  じゃあピカは僕のこと嫌いになったりしたんじゃないのかなあ?」 「青木さんを嫌いになる人なんていませんよ。  お友達のみんなも青木さんの事心配してるでしょう?」 そういわれて僕は各務さんや雪男さんたちの顔を思い浮かべた。 真っ暗だった目の前が少し明るくなったような気がした。 そして竹田さんの顔を見る、メガネの奥の目が優しく僕を見ている 「でもやっぱり青木さんはピカと一緒にいて欲しいんで、  青木さんこの子とお友達になってくれませんか?」 そう言って竹田さんは後ろの方から首にリボンを巻いたピカチュウを取り出した 「うわー竹田さん僕この子とお話してみても良い?」 「ええもちろんですよ。」 僕はピカチュウをだっこして目でピカチュウと話しはじめた 『こんにちはピカチュウ、僕の名前は青木』 『ピッカッチュウ、ピカピカ、ピカチュウ(こんにちは、ボクはピカチュウ)』 『ピカチュウにお願いがあるんだ、聞いてくれる?』 『ピカ ピカピカァァ?ピカ?(おねがい?なに?)』 『よかったら僕とお友達になってください。これが僕のお願い』 『ピイ〜カ、ピカ チュウゥ(うん、いいよ)』 「うわ〜本当?」 思わず声を出してしまって慌てて竹田さんのほうを見たら 竹田さんは笑ってこっちを見てた 「仲良くなれそうですか?」 「うん!僕とお友達になってくれるって〜  竹田さん僕、たまにこの子に会いにお部屋に行って良い?」 竹田さんのピカチュウをだっこしながら僕は聞いてみた。 「そのことなんですけどね、青木さん、この子を青木さんの部屋で  預かってもらえませんか?」 「どうして?竹田さんの部屋じゃダメなの?」 「僕の部屋にいると、原君達に悪戯されてしまいそうで……」 「いたずら?」 「耳引っ張ったり、尻尾むぎゅってしたりするんですよ…」 「耳引っ張っちゃダメー!ピカチュウがかわいそうだよう」 だっこしていたピカチュウを抱きしめる 「だから……青木さんに預かっててもらいたいんですよ、  もし良かったら青木さんの家の子にしてあげてください」 「本当に?僕の家の子にして良いの?」 竹田さんの顔を覗き込むと、メガネの奥の優しそうな目が頷いた。 「竹田さんありがとう〜この子の名前は何にしようかな?」 「ぴかで良いんじゃないですか?」 「そうだねーよろしくね、ぴか」 その夜僕は思う存分鬱寝をした 数日後、竹田さんがチャラい音楽のCDとチーズケーキを持って遊びに来てくれた。 ぴかも竹田さんにだっこされて嬉しそう おいしいチーズケーキと、チャラい音楽、隣にはぴかと竹田さん。 今日は僕、鬱寝をしなくてもすむだろう。 「竹田さんこのアルバムはなんていうバンドの人達なの?」 「RADIOHEADってバンドの『OK COMPUTER』ってアルバムですよ」 「かっこいいねー」 「あっ、青木さん頬にケーキのかけらが……」 そう言って竹田さんは僕のほっぺをぺろりと舐めた やっぱり竹田さんは良い人……?
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