お昼寝ベイビー
何でこんなことになったのかなぁ、と、俺はぼんやりと思った。 左足の太もものしびれが気持ち悪くて、そっと動かそうとするが、上に乗っかって いる重みがそれをさせてくれない。目を閉じたワタナベは、頭の下に自分の左手を はさんで、横になって、スースーと寝息をたてていた。 『いいけど、ヤマグチがトランプで負けたら、1時間、俺の枕代わりだからな』 ちょっと暇だったからって、ワタナベにトランプの相手を頼むんじゃなかった。 勝てるわけがないのに。 俺は、すっかりしびれた左足を放棄して、読んでいた雑誌に意識を戻した。 ………。 全く、内容が頭に入ってこないので、俺は雑誌を読むのをあきらめた。 「ワタナベ、もうあきらめてよ。男の膝で寝たって面白くないだろ? ねぇ」 「……」 ワタナベは、それでもスヤスヤと寝ている。俺の声なんて、届いていないらしい。 時計を見ると、まだ15分しかたっていなかった。あと45分、ワタナベを膝枕 なんて、無理だ。ありえない。 「ワタナベ、ねぇ、…うわ」 ワタナベは、ゴロリと寝返りをうって、あおむけになった。その拍子に、俺の太ももに あった左手が、さわりと動く。慣れない感触に、思わず声をあげてしまった。 変態チックだ。 俺は、そっとワタナベの手を持ち上げて、足からおろした。 「うー…」 「わ、ワタナベ」 ワタナベは、半分目を開くと、寝ぼけたように寝返りをうって、左手を元の位置に 戻してしまった。オンザ俺の左太もも。 「ワタナベ、ちょっと、もう起きてよ。他に何でも言うこと聞くからさ」 ズボンごしに、ワタナベの体温が伝わってきて、俺はすごく恥ずかしい気分になった。 起こそうと揺り動かすが、左手と頭は動かさず、器用に右手で、俺の手を追い払う。 ダメだ。この人、本気で、俺の膝枕で寝ようとしている。 「ワタナベ、ねぇ、お願いだから」 ワタナベは、もう一度寝返りをうった。左手が動いて、俺の太ももの付け根に伸びてきた。 「…ヤマグチ…?」 ワタナベが、つぶやいた。起きたんだ、と思い、俺はワタナベの肩に手をやる。 「ワタナベ、起き…てない?」 ワタナベは、さっきと変わらず、スースーと寝息をたてだした。どうやら、さっきの つぶやきは、寝ぼけていたらしい。何となく、顔が火照ってきた。 「ね、ねぇ…いいかげんにしてよ」 太ももをぐらぐらと動かすと、ワタナベの眉がぎゅっとよせられる。 そして、太ももの付け根をギュッとつかまれた。 驚いて「うあっ」と声をあげると、ワタナベは力をぬく。そして、何かをさがすように 太ももに手を滑らせだした。 しばらく我慢してみたが、どうにもこそばゆい。 「わ、ワタナ…」 「ヤマグチ君、こういうゲームはどうだろう」 「え? お、起きてるの?」 ワタナベは、目をつぶったままで、しっかりした口調でしゃべりだした。 「やめてほしければ、『夕食の時間まで、大人しくワタナベの枕になります』と言う」 「はぁ?!」 キョトンとしていたら、ワタナベの手が、すっと上に伸びてきた。 あわてて手を押さえるが、俺の力をものともせず、ワタナベは俺の大事な部分を握って しまう。 「いや、あの、わ、ワタナベ…あっ!」 「ヤマグチ、ほら、どうする?」 やんわりと手を動かされて、俺はさらに顔を赤くした。 必死で左手をひきはなそうとするが、思いのほか力が強いのと、大事な部分を握られて いるせいで、どうしようもない。 「あ、…や、やめっ……」 そんなこと、誰にもされたことが無いので、手の力がぬけてきた。 ズボンごしに、ワタナベの手の感触で、自分のモノがどうなっているか、嫌でもわかって しまう。 「ほら、どうする? 言う? 『夕食の時間まで、ワタナベの枕になります』って」 「変態…っ!」 ワタナベは、パチッと目をあけると、手の動きを止めてニヤリと笑った。 「まぁ、今放り出しても、半分タってるからなぁ。どうしようもないんだけど」 「……っ!」 俺が反論の言葉をさがしていると、ワタナベは左手を俺のモノからはずして、腰に腕を まわした。 「ヤマグチ、体温あがってるよ?」 ヒョイッとワタナベは、俺を押し倒した。ちょうど倒れたところにクッションがあり、 後頭部にやわらかい感触が伝わる。ワタナベは、右手で簡単に、抵抗する俺の両手を 封じ込めてしまった。何だか悔しい。 「ヤマグチ、どうする? このゲーム。夕食時まで3時間、枕になる? ならない?」 まな板の上の鯉状態の俺に、どうしろというのだろうか。 ワタナベは、俺の返事を待たずに、首筋にかみついてきた。 「ま、枕になるからっ!」 「ヤマグチの言葉には、心がこもってないな」 シャツのボタンを一つ一つ、わざとゆっくりとはずされた。 「ちょっと待って! ま、枕になりますからっ!!」 「あ、そう? 良かった。じゃぁ枕になってもらうためには、まず安眠のために、  ヤマグチの、このタちあがった息子さんの処理をいたさないと、寝心地が…」 「い、いいっ! いいよっ! 大丈夫だからっ!!」 ワタナベは、ニヤニヤと笑いながら、もう一度首筋にかみついてきた。そして、はだけた シャツに唇をすべらせる。 「…ちょっ……や、やめてってっ! お願いだよっ! もうワタナベの睡眠の  邪魔、絶対にしないからっ! 俺の負けでいいからっ! マジでっ!!」 「あ、そう? じゃぁ、俺のサービスを待っているココはどうする?」 ワタナベが、俺の眼をのぞきこんできた。 涙ぐんで焦点のあわないぼやけた視界に、ワタナベの瞳がうつる。 だまりこんでいる俺を、心底楽しんでいるに違いない。 「…ワタナベ、変態も度をすぎるとひくよ…」 「ここはひいてないって」 ワタナベにズボンごしに握られて、俺はギュッと目を閉じた。 握られただけで、俺のモノは硬さをましていて、恥ずかしい。 顔の上で、ワタナベの笑うような息を感じる。 唇に、唇の触れる感触がした。ギュッと閉じた目にもキスされた。まぶたを舐め られた。そして、もう一度キスされた。今度は、舌が入り込んできた。 そのたびに、切ないような快感が、俺の脳に送られてくる。 熱で浮かされたように、思考が奪われていく。 「…ゆ…許してよ…」 「夕食まで、枕になる?」 「な、なるから…」 「もう俺が寝てるの、邪魔しない?」 「しないから…」 「俺のこと、好き?」 「……す……」 「スキ?」 「…好き……」 「よろしい」 ワタナベは、俺の両手を拘束する手を、右手から左手に変えて、そして、ズボンの ベルトをはずしてしまった。外気に触れて、少し震える。 「ご褒美あげなきゃなー」 ワタナベの手を直に感じて、俺の体はすくみあがってしまった。 ワタナベは、そんな硬直した俺の体を、キスをいろんな場所に落とすことによって、 ふにゃふにゃにやわらかくしてしまった。 俺の思考は、途中で切れた。 結局、気がついたら夕食の時間は過ぎていて、外は真っ暗になっていた。俺はぐったり と、次の日の朝まで、何をする気にもならなかった。ワタナベも、夕食の時までだった はずなのに、俺の胸に頭をのせて、ぬいぐるみに抱きつくような形で、次の日の朝まで 寝ていた。 何でこんなことになったのかなぁ、と、俺はぼんやりと思った。
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