unrequited love.〜北風〜
いつから彼が気になっていたのだろう? 休日、寮のベッドで毛布にくるまりゴロゴロしながら考えていた。         いつから彼のことを思っているのだろう? ここ数日そんなことばかり考えている俺は変なのだろうか… 自分にそう問いかけても答えは出ないままだった 気がつけば…その表現が一番あっているような気がする… 気がつけば、彼のことが気になっていた。 それまで苦手な感じだったのに…、 彼が心から慕っていた高等部の先輩の為や、彼自身の信念のために戦っていた時は 遠巻きに眺めながら、脇目も振らずに突っ走ってる彼の、目の前に壁が出来た時 彼はどうなるのだろう…と、その瞬間を興味本位で見て見たいと思っていた。 その壁は案外早く彼の目の前に現れ、彼が自力で立ちはだかる壁を乗り越えた後 自分が進もうとしていた道を見失った彼は、一度自分の歩みを止めかけた。 そんな彼の迷いと落ち込みを感じ、俺は気がつけば、彼を応援していた。 そして、迷いながらも一歩一歩、進み始めた彼を気がつけば好きになっていた。 そんな結論に到達して、なんだか恥ずかしくなったのと、自分の中で、 思考を繰り返す事しかできない自分に、嫌気がさして、そのまま寝てしまった。 翌日、学校でも彼の事を目で追ってしまう、同じクラスの斜め後ろの席から、 黒板を見る振りして彼を見ていても、何も伝えられないままの自分が嫌になった。 クラスでの彼は少し浮いている、みんな以前の攻撃的だった彼の印象が強くて なんとなく遠巻きに眺めているって感じだった。 俺も、手を少し伸ばせば触れられるほどの距離にいる彼と、言葉を交わしたのは 数回くらいしかなかった。 ただ…俺の場合は、彼と話す時、緊張と動悸で何も話せなくなってしまうってのが 敗因なんだけど… そんなかっこ悪い自分にも本当に嫌気がさす… 翌朝珍しく早い時間に目を覚ますと外は一面の銀世界だった 真っ白な世界に、なんだか嬉しくなっていつもなら二度寝する時間なのに 学校に向かう、この雪じゃ休校になるかもしれないけど、 なんとなくいてもたってもいられなかった。 学校に着くと、校庭から中庭に続く足跡が一筋あるだけだった… 一番乗りだと確信していた俺は、先を越された悔しさにその足跡をたどって 中庭の方に行ってみた…そこには彼が一人立っていた。 「はまち?」 思わず声をかけてしまう。その声に気付いて彼はこっちを見た 「よう…お早う…本当に早いな…」 彼のその言葉に耳が熱くなるのを感じる。 「う…うん、なんだか早く目が覚めてね…俺出身が九州だから雪が結構珍しいんだ」 聞かれてない事まで、口走ってしまう…鼓動が早くなる 「そうなのか?俺はこっちの人間だからなー」 始めてみる笑顔に鼓動が早くなる それから二人で雪を眺めながらいろいろな話をした。 「はまちって案外話しやすいんだ…」 思わず口走って慌ててしまった。 「い…いやほら…あの…」 フォローしようとして言葉が見つからない。 「気にするな…確かに前の俺は良い印象無かったと思うし…  今思い返すと相当やな感じだっただろう?」 「そ…そんな事ねえけど…もう少し早く話しかけれてたらってちょっと後悔してる」 心からそう思った。 「また…話せるかな?」 耳がさらに熱くなるのを感じながら聞くと、彼は照れたように笑って頷いた 「それにしても寒いな…教室に行くか…」 「そうだな…」 二人で中庭から校庭に戻ると、初等部の子供がはしゃぎながら戦隊ごっこをしていた 「子供は元気だなー」 じゃれあう子供達を見ながら微笑んでいる彼の横顔を見つめ小さく彼に向かって呟いた 「…好きだ…」 その声は雪に吸収され彼の耳には届く事は無かった。
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