ポッキーゲーム
麻雀に熱中しすぎて、夜遅く部屋に戻ったら、宮本がいなかった。 代わりに、コタツの上にはカラフルな箱が一杯つまれている。 「…何だコレ」 箱一つ一つには、かわいらしいカードがついていたので、一つ引っ張り出して 見てみた。そこには、女の子らしいカラフルな色づかいで、『☆宮本さんへ☆』 という文字が躍っていた。 「………」 コタツの上には、少なく見積もっても10をこえるチョコレートが置かれている。 原宿は、少し不機嫌になって、一番上にあったチョコレートの箱をつかんで、 勝手に開いた。かわいらしいハート型のチョコレートが、赤い箱にきっちりと つめられている。何だあの野郎。あてつけみたいに、とつぶやいて、腹立ち まぎれに封をやぶって、一個食べてやった。甘い。 宮本がこんな夜遅くにどこに行ったかは、考えたくなかったので、原宿はコタツ の電気をつけると、もぐりこんでそのへんに落ちていた漫画を手にとった。 漫画の内容はまったく頭に入ってこず、結局睡魔に負けて、寝てしまった。 「……起きた?」 ぼんやりとした頭で目を開けると、かなり至近距離に宮本の顔があったので、 原宿はびっくりした。 「おはよー」 「…いつ帰ってきた?」 「ずいぶん前かな。よく寝てたね」 原宿のほっぺたをつねりながら、宮本がニヤニヤと笑う。 その手をはらいのけて起き上がろうとしたら、肩を押さえつけられてはばまれて しまった。 「…何?」 「原宿、お前、コタツの上にあったチョコレート、勝手に食べただろ」 「…食べたけど」 宮本は、原宿が勝手に開けたチョコレートを一個取り出すと、原宿の口に放り こんだ。 「…?」 起きたばかりなのに、チョコレートのねばつきがのどにからみつく。 「お前がコタツつけちゃったから、溶けちゃってるんだわ。チョコ、ほとんどが  全滅だよ」 「ごめ…ん?」 チョコだらけの指を原宿になめさせながら、宮本がニヤリと笑った。 「反省する?」 「…? う、うん…」 「じゃぁ、弁償してもらおうかな」 「は?」 起きたばかりの寝ぼけた頭は、働きが悪い。宮本の意図がわからず、原宿は ぼんやりと宮本の顔をながめていた。すると、宮本は原宿のセーターのすそ からひんやりとした冷たい手をつっこんできた。 「つめたっ! お前…けだものかよ!」 びっくりして押しのけようとすると、右手で両腕をまとめられて、頭の上で ぬいとめられる。 「ほら、弁償してもらうっていったじゃん。大人しくしてろよ」 首すじや耳にキスを落としながら、宮本がそう囁いた。原宿は、『何だこいつ』 と思いつつ、あきらめてされるがままになる。 深くキスされて、口を離すと、「チョコ味だな」とささやかれた。誰のせいだ。 「…嬉しげに、女にチョコレートもらって、コタツの上に放置して…。そう  いえば、さっきまでどこ行ってたんだ? 夜遅くに」 ベルトをぬきとられながら、原宿がそう言うと、宮本はニヤッと笑って、ポケッ トから小さな黒い箱を取り出した。 「女の子から、チョコレートもらってた」 いつのまにか宮本は、原宿に馬乗りになっている。 右手で原宿の両手を封じ、左手で器用に箱を開けると、黒いチョコレートを 一つつまみだした。 「食べる?」 「いらねぇよ。お前がもらったんだろ」 「遠慮すんなよ。ほら、2個入ってるから、お前にもおすそわけでやるよ」 下あごに指をかけられ、口の中に放り込まれる。 噛むと、薄いチョコレートが砕け、中から液体が出てきて、むせた。 「…こっ…酒入ってるじゃんっ…!」 「え、マジで? ふーん…。チョコレートボンボンかー」 包装を見ると、店名が入っていないので、どうやら手作りらしい。手作りの チョコレートボンボンなんて、はじめて見た。宮本は、もう一個を指でつま んで、口に放り込もうとしたが、思いとどまった。 「もう一個いる? 原宿」 「も…いらない…」 ゴホゴホとまだむせている原宿に、宮本は悪企みを思いついた顔で、「遠慮 するなよ」と、原宿の口に差し出した。しかし、原宿はがんとして口を開け ないことでねばった。 「…じゃ、しょうがないなぁ」 宮本は、チョコレートを箱に戻すと、原宿の体から降りて、一緒にコタツに 入った。 「…せまいだろ…!」 2人用のコタツの、一方向に二人で入ると、さすがに窮屈だ。 しかし、宮本は気にしなかった。 むせたのと、飲みなれない強い酒を飲んでしまったせいで、涙目になっている 原宿の目元に口づけると、かすかにブランデーの匂いがした。 宮本は、原宿のズボンに手をかける。 「コタツの中なら、脱いでも寒くないじゃん」 一気に脱がせると、原宿は顔をそむけた。 もう何度も体を重ねたはずなのに、脱がせる時は恥ずかしがるのが、何とも 言えずかわいい。 原宿の体を裏返して、背中に無数のキスを落とすと、原宿が小さな悲鳴をあげた。 「…お前、最近変態じみてきたぞ…」 原宿の抗議を無視して、そっと原宿の中心部に指をはわせると、原宿はびくりと 小さく震えた。 「いいから黙って、感じてなさい」 指をなめさせて、それを内部へ侵入させる。 もうすでに、原宿の両腕は解放していたが、原宿はコタツの敷き布団を握り しめていて、多分気づいていない。 もういいかな、と思い、宮本は原宿の耳元にこう囁いた。 「…本当に、もう一個チョコレート、いらない?」 「え…?」 快感でボーっとしていた原宿は、宮本がいきなり何を言い出したのか分からない。 「そうかー。いらないかー。どうしようかな、これ…」 宮本は、さっき箱に戻したチョコレートを自分の口にいれて、そっと出した。 そして、コタツの中にいれると、原宿の内部にすべりこませた。 「っ!!! み、宮本!」 「力いれると、割れちゃうぞー」 いきなりの異物の侵入に、原宿は目を白黒させる。苦しい。 固いチョコレートが、中でどんどん溶けていて、それも気持ち悪かった。 「…だ、出せよ…」 大きな声を出すと、薄いチョコレートが割れそうで怖いので、原宿は精一杯 小声でそう言った。 しかし、宮本は聞こえないふりをして、遊ぶようにそのチョコレートを奥へ 奥へとやる。 「ちょっ、宮本…マジでそれは…! あっ!」 いきなり体に電流が走ったような刺激がきたと思ったら、チョコレートは奥の 方で、あっけなく割れてしまった。 「あっ…やっ…みやも…とっ…! このアホッ…バカ…」 体の奥の方が熱い。液体が動いているのが分かる。 その気持ち悪さに、原宿は敷き布団にしがみつきながら必死で耐えるが、それ でも気持ち悪さは消えなかった。 「…あっ…う……」 そのうち、気持ち悪さと熱さがどんどん全身にまわってくる。 「すっげー。中、熱いよ、原宿」 宮本が耳に息をふきかけながら囁くのさえ、原宿には強い刺激のように思えた。 頭全体はしびれているようなのに、奥の方だけ妙に感覚が鋭敏になっているよう な気がする。 「中でチョコレート、溶けちゃってるよ…。今、いれたらポッキーみたいに  なるかなぁ」 「死ね…っ」 原宿には、それしか言うことはできず、あとは宮本に翻弄される以外、何もでき なかった。 次の日、原宿が二日酔いのせいでベッドから起き上がれなかったのは、 言うまでもない。
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