アルコール
 「賭けですか?」  酔いのせいでちょっとぼんやりとした口調で聞き返してくる三等兵に兄貴は頷いた  「そう、これから私がやろうとすることが、できるかできないかを三等兵が答えて   その通りになったら、三等兵……君の勝ちだ。   罰ゲームは負けたほうが勝った者の言うことを何でも聞く、というのはどうだ?」  「なるほどわかりました……」  酔った勢いなのか三等兵は即答した、これから自分に起こることを  三等兵は予測できなかった  「じゃあ、はじめよう、問題はこれだ……   今から私は三等兵にキスをする……できるか否か?……」  「え?」  一瞬酔いが覚めて、さっきとは別に頬が熱くなっていく……  三等兵は兄貴の問題に困惑した。  「じゃあ私に見えないようにこの紙に答えを書いてくれ」  兄貴は一枚の紙を渡すと三等兵に背を向けた……  (どう答えればいいのだろう……)  三等兵はしばらく考え込んで一言紙に書いた  『できない』  これは兄貴先生のお遊びに違いない、こうやって自分がどきどきしているのを楽しんで  結果を出すときに『ちょっと悪ふざけが過ぎてしまったようだ……』と  笑ってくれるに違いない…まだあどけない少年の純粋さがそう答えさせたものだった  「書いたかい?それじゃ答を出そうか……三等兵……目を閉じて」  目を閉じて兄貴先生の笑い声を待つ…『すまなかったな……』  って言ってくれるのを……  兄貴の気配が近付いてくるのを感じる  三等兵はさらに硬く目を閉じた。  軽く顎を持ち上げられた瞬間、唇にやわらかい感触を感じた   さらに硬く目を閉じる、手の中の『できない』と書かれた紙を握り締める  「君の期待を裏切ってすまないが……私はそこまで優しい人間じゃないんだよ……」  兄貴は耳元で囁くと、再び唇を重ねてきた  手の中で握り締められていた紙が力なく落ちた……  「賭けは私の勝ちのようだね?」  兄貴は落ちた紙を拾い満足気に頷き、再び三等兵の唇を奪った
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