3days
2年前の俺は今より身長が20数センチも低く力では大人にかなわなかった…… 〜マサムネ〜 「こんな子供相手に…止めたほうがいいんじゃないの?」 俺の前に背中を向けて立ちはだかってる男が言った…… 子供って言っても俺はもう来年には高校生だ!そう叫びたい小一時間叫びたい! 大体なんなんだコイツは?いきなりしゃしゃり出てきて何様のつもりだ? 路地裏でかつあげされそうになってる一見子供(こだわるな俺…) なんてどこにでもいるもんだろう? それをわざわざ割って入ってくるなんて何考えてんだ?貴様正義の味方様ですか? 案の定俺をかつあげのターゲットにしていたヤンキーは声を荒げている 「なんだとゴルァ!カンケーねーだろオメェには!!」「ウゼェんだよ!逝ってよし」 どこかで聞いたような罵倒にうんざりしつつも、男の背中にこっそり文字を書く 『にげるぞ』 正義の味方様のやなやつだけど、一人で逃げるのは卑怯な感じがして嫌だった それを感じ取った男が手を後ろに回してこっそり親指を立てた後 手を広げてカウントダウンを開始した5・4・3・2・1… すべての指が折り曲げられると同時に男がヤンキー一人の向う脛に蹴りを入れて 俺の手をとって走り出す…って何で野郎と手をつないで走らないかんのだ! 「あー面白かったぁー」 ヤンキーをまいて公園で一息つくと、男がのんきに笑う 気がつくと手を繋いだままだったので慌てて振り解く 俺はといえば、家出してゲーセンに行けばヤンキーにカモにされそうになるし こんな変なやつと手を繋いで街中を走る羽目になるなんて…… 家出をしようとした時の最低最悪の気分が、ぶり返してきて鬱氏寸前だ 「家は近いの?送っていくよ、それにしてもなんであんな所で一人うろついてたの?  塾?日本の子供は大変だねえ……」 「って何しみじみ納得してやがりますか?俺はもうすぐ中3で子ども扱いされて  守られるほど幼子ではないし、今家出中なので帰る所なぞ無い!  とりあえずこっちが頼んでないこととはいえ、先ほどの礼は言っておく、  ドウモ。ありがとうございました。」 一気にまくし立てて頭を下げた後、早足で男から離れていった 背中から声がする 「マジですか?俺と一つしか違わないのか?ってちょっと待ちなよ」 一つしか違わんのかい!!そんな縦にばっかり伸びやがって……くそっ! 待ってなどやるものかと更に歩く速度を増す 「しょうがないなあ……」 男が背後から駆け寄ってきて俺の手を掴む 「おいで……」 手を掴んだまま再び駆け出したので一緒になって走るしかなかった って!!また手を繋いで走らないかんのか?てーをーはーなーせー ……連れて来られたのはこの辺で一番と噂のシティホテルだった… 初めて来る場所に緊張してしまう自分の小市民っぷりにちょっと鬱になりながらも 男に手を引かれてロビーに入っていく、男は慣れた感じで平然とフロントの前を通り エレベーターに乗り込む 「何なんだ此処は?俺をどうするつもりなんだ?」 エレベーターの中でやっと口を開く 「だって帰る所ないんでしょう?俺高校の寮に入るまでの3日間しか此処にいないけど  その間此処にいればいい」 「世話になる義理などない!ええい手を離せ!帰る!」 その時に目的の階に着いたらしくエレベーターのドアが静かに開いた するとまた手を引かれて連れて行かれる、抵抗して手を振り解こうにもすごい力で振り ほどけない 引っ張られるまま、部屋に引き込まれた。やっと手が解かれた そのままドアのほうに向かって歩いていくと背後から声がした 「少年……これなーんだ?」 知るもんか!と振り向くとそこにあったのは俺の財布??? 男はその財布をクローゼットにある金庫に入れて扉を閉めた…… 金庫の扉は暗証番号を入れなきゃ開かない造りになっている 「何しやがる貴様!」 「番号は俺しか知らない…3日後にこの金庫を開ける……それまでここにいるって事で  どう?」 にっこり笑って男が言う……くぅぅぅぅ憎い一発殴ってやりたいほど憎い…… しかし力では男に敵いそうになかったし、殴ったとしても財布は帰ってこない ここは仕方なく言うことを聞いたふりするのが得策なのだろうか…… 大体なんでこいつは私にこだわるのか?そしてなんでこんなホテルにいるのか謎ばかりだ… もしかして……こいつその手の趣味の……? 「安心して良いけど俺にそっちの趣味はないよ、少年にこだわったのは、  そんなに猫みたいに毛を逆立てて歩き回っていたら、いらない敵を作るだろうってのと  それがなんとなく面白そうだったから……  気がつかなかったかもしれないけどゲーセンにはいる前から少年のことは見てたよ……」 人の考えてることがなぜわかった?貴様ニュータイプ? はぁ……なんだかもうどうでもよくなってきた……ここはやつに従おう 諦めるのが早い気がするが……これ以上考えてもしょうがない 「わかった……3日間貴様の相手をすれば良いのだろう?どうとでもすれば良い  そして俺は少年ではない!たかが一つ違いの人間にそう呼ばれるのは不愉快だ!!」 「わかった名前は?」 「マサムネだ!!」 「俺はワタナベ」 こうして奇妙な3日間が始まった
次へ行く ブラウザの「戻る」で戻ってください