『Answer』−健−
 寮に帰る近道に高等部の裏庭を通ろうと思った、  植え込みを抜けて高等部に入る、そこには見覚えのある後姿があった 「マサムネ先輩?」  思わず声をかけてみる  近寄ってみると、マサムネ先輩は……泣いていた! 「せ…先輩?なんかあったんですか?」  驚きすぎか?俺……いや、でもあのマサムネ先輩が泣いてるって  一生に一度見れるかみれないかのこと、驚きもする 「なんだ健か……」  先輩はこっちを向いてそっけなく答えた  相変わらず、この人は俺の事を嫌っているのかなあ?  おれとしちゃ、ちょっと切ない……  って、この人ずっとこんな風に無表情で泣いてたの……  気になった俺はこの人の隣に座った。 「寮に帰らなくていいのか?」  相変わらず無表情泣きで問いかけてくる  こんな状態のこの人ほっとけるわけないよ。 「先輩は帰らないんですか?」  逆に問いかける 「俺か?俺はこれが止まらんうちは帰れんからな……   どういうわけかさっきから止まらねぇんだ。」  と、流れ続けてる涙を指差した。 「じゃあ、俺もそれまで付き合いますよ。」  …………  ………  ……  とは言ったものの、何話せばいいのか……沈黙が怖い  それでもこの人と、二人きりでいるのがうれしいのか、顔が自然と緩んでしまう…… 「お前も変な奴だな……俺なんかと一緒にいると、ナミや、お前の取り巻きどもが   心配するんじゃねぇのか?」  先輩がちょっと笑った、それだけで少し嬉しくなった自分に気付く  そして俺の周りのみんなの事を思った。  確かに、周りのみんなはこの人の事を、狂犬だのなんだの言って嫌っている。  ナミさんも、あんまり俺にこの人のことを話してくれない……  ただ『あまり近寄らない方がいい』って言うだけ……  そういうときのナミさんは、なんだか悲しそうな顔をしていたのを覚えてる。  そんなことを考えていると、この人はまた話し始めた。 「なにしろ俺は、お前らにとっちゃ、目の上のたんこぶの嫌われ者だしな……」  口調は明るかったけど、さっきの笑顔が消えた 「でも……俺はもうヤツに関わるのはやめた……」  そう話すこの人は、この人の事を話すときの、ナミさんに似ていた  なんだか、ナミさんと、この人ってどことなく、似ている気がする……  でも俺にとって、ナミさんは尊敬する先輩だけど、この人は……なんだろう?  う〜〜〜ん答えが見つからない……    俺は立ち上がり、この人の前にかがんで、  キスをした    こうやったら自分の中で答えが出せそうな気がして…… 「俺は、先輩のこと好きですよ」  硬直しているこの人に言った。  俺の中で、出てきた答えに顔が綻ぶ。  目の前にいるこの人が好きだ……  この思い届くかな?  先輩の目から、涙は止まっていた 「先輩、涙……止まったみたいですよ、帰りましょうよ」  いつの間にかあたりは暗くなっていた  先輩は正気に戻ると、急に立ち上がり、早足で歩き出す。  俺は先輩の後を追う…… 「先輩〜待ってくださいよって、一緒に帰りましょうよ。」  追いかけながら俺が言うと 「お前など……知るか!俺は……俺は一人で帰る!!」  街灯に照らされた先輩の後姿  その時見えた耳たぶは、驚くほど真っ赤だった。                  
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