アルコール
    エピローグ  一目見たとき、  少年を欲しいと思った  華奢な体、  時折見せる笑顔、   どんなことをしてでも手に入れたかった  ……………そう  どんなことをしてでも(−_−)      12月某日(−_−)  毎年この時期になると、学校での私の個室にはたくさんの生徒たちがやってくる。  毎年クリスマスには、暇な者が集まりこの部屋で騒ぐことになっていた  生徒会(ワタナベ)が企画し、私は会場を貸すだけという時もあるが、  今年は生徒会は主催しないらしいので、参加希望の生徒は直接私のほうにやってくる    「失礼します」  彼が入って来たとき私は彼に背を向けて仕事に集中しており、顔を上げることすらしなかった  「ちょっと待ってて、もうしばらくしたら一息つけるから…」  それからの数分間、彼は黙ってその場で待っていた、  やっとのことで仕事を片付けるとようやく彼のほうを向いた。  「待たせてしまって悪かったね、それで君は……?」  「中等部の三等兵といいます、今年のクリスマス友人と二人で参加したいのですが」  そこには小柄な少年が立っていた  この世に一目惚れという言葉があるのを、はじめて実感したような気がした…… 「そういうことなら大歓迎だよ三等兵」  つとめて平静を装い笑いかけると、彼もつられて笑った  そのほにゃっとした笑顔  か……可愛いじゃないか(−_−)心の中でもだえ苦しむ私が居る  この少年が欲しくなったどんな手を使ってでも……  このときから私は行動を開始した。    12月某日(−_−)  どうやったら彼を手に入れることが出来るか…  今の私の頭の中はそれだけで一杯である  まず二人きりになるよう何とか仕向けよう、ならばあの男の力を借りるか…  奴の部屋のドアをノックすると同時に勢いよくあけた  「それってノックの意味ないんじゃ……」  「まあ気にするな、春九堂(−_−)さて君の任務だが…」  「に…任務?」  「私の代わりにクリスマスの日、生徒を取り仕切るように、参加者名簿はこれだ」  「へ?」  「以上だ幸運を祈る……なお私は自動的に消滅する」  言いたい事だけ言ってさっさと部屋を後にする。  背後で春九堂の叫び声が聞こえるが気にしないでおこう。  これで他の生徒は何とかなった、あとは彼と一緒に参加する予定の友達だ…  友達といいつつ本当は………  いかんいかん考えるな私……  しかし、いくら春九堂に任せたといっても、  その友達から変更等が彼の耳に入ると不味いな…何とかしないと……      12月某日(T■T)  今年のクリスマスはいつもと違う。  そんな気分で浮かれながら日々をすごしてきたのに……    「ほんっと〜に、ごめんって」   一緒に兄貴先生のクリスマスに参加するはずだったたかよしが  目の前で頭を下げている……  でも不思議なことに、頭は下げているけど詳しい理由は教えてくれない    「まあしょうがないよ、高等部の先輩方も参加されると思うし、   当方一人で行って来るよ」  一瞬たかよしがおびえたような表情を見せた……  「本当にごめんな……おいさんの分まで楽しんできやい」    本当にすまなそうにあやまるので、いつものたかよしと比べると  なんだかおかしくなってしまう  「うん、そうするよ」  高等部の先輩が多い兄貴先生のクリスマス、なんだか今から緊張してしまう  でも今から楽しみ     12月24日(1)(T■T)  朝から緊張と期待とが入り混じる妙な気分のまま寮を後にした  学校に行くので制服にしたけど、私服でも良かったんだろうか?   体育館横の兄貴先生の教官室の扉をノックする  「失礼します〜」  軽く会釈をして顔を上げると、そこには兄貴先生しかいなかった……    12月24日(−_−)  彼の友達、たかよしが素直な男でよかった……  あれぐらいのことで引いてくれて、なんだかちょっと申し訳ないが  今日彼を手に入れる…いよいよ今日が実行の日だと思うと、私の胸は高鳴った  この高鳴りを抑えつつ、彼を迎える準備をととのえる  これでいつでも迎えられる  足音が聞こえてくとともに胸の高鳴りはいっそう増してきた  しかしここでへまをするわけにはいかない……  深呼吸して心を静めた  近付く足音……  ノックの音……  「失礼します〜」    作戦開始だ         12月24日(2)(T■T)  「すまないね……せっかく来てくれたのに……   どう言う訳か急にキャンセルが相次いでしまってね」  兄貴先生は力なく笑った  応接セットのテーブルに並べられた料理やケーキ…  その中にいる兄貴先生がなんだか悲しかった  「私は生徒に嫌われているのみたいだね……」  兄貴先生が呟く  「そ…そんなことないですよ!!兄貴先生!当方は兄貴先生のこと好きです!」  思わず口走った自分に驚く……  好きだなんて……兄貴先生に変に思われないだろうか……  頬が熱くなる  「そうだな……三等兵は来てくれたしな……   じゃあ二人きりだけど始めるとしようか?」  変には思われなかったのか、好きですってのは聞き逃してくれたのか  兄貴先生は笑顔を見せてくれた  それから二人での奇妙なクリスマス会は始まり  二人で料理を食べたり、二人でプレゼントを交換したり  その間も兄貴先生はいろいろな話をしてくれて楽しかった。  そんな時兄貴先生が冷蔵庫から何か持ってきた  「そうだ、これも飲んでしまおう」  「これってなんですか?」  「シャンパンだよ…学内じゃまずいけど、ばれなきゃ大丈夫だろう   三等兵も誰にも言うなよ」  そういって兄貴先生は子供みたいな笑顔を見せた  初めて飲んだシャンパンは、口当たりが良くてほんのりと甘かった  口当たりが良くて飲みやすいせいか、飲みすぎてしまい頭がくらくらする  身体中が熱くなってるのがわかる……そんなときに兄貴先生が言った  「三等兵……私と賭けをしないか?」
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