クリスマスの朝に
これは、XXXの続編です。 頭が痛くて、眠りの世界からひきずりだされてしまった。 しばらくは目を開けずに抵抗していたのだが、頭の痛さに加えて、みぞおちあたり の気持ち悪さも手伝ってきた。 酒の飲みすぎだ。二日酔いだ。 ゆっくり目を開けると、すっかり部屋が明るくなっている。 ……昨日、自分はどうやって帰ったっけ。 ぼんやりと、昨日無茶な飲まされ方をして、泥酔したことを思い出した。 どうやら、原宿と一緒にクリスマスイブは過ごせなかったようだ。 軽くためいきをついて、どうやって原宿に謝ろうか、と思ってふと横を見ると、 原宿が、隣で寝ていた。 ちょっと驚いた。 原宿を起こさないようにそっと体を起こす。 丸くなって眠っている原宿に、布団をきっちりかけてやると、もぞもぞと頭まで もぐりこんでしまった。どうやら寒いらしい。すっかり寝ている原宿は、コロン と寝返りをうって、布団を自分だけのものにしてしまうと、またすやすやと寝息 をたてだした。 部屋を見回すと、テーブルの上には手のつけられていない食事と、一切れだけ切り 分けられたケーキがある。原宿のことだから、帰りが遅い俺を待って、何も食べず に待っていたのだろう。 俺は、ベッドを揺らさないように脱け出した。 顔を洗って、歯を磨いて、二日酔いの頭をシャッキリさせると、俺はバッグの中 から昨日原宿のために買ったプレゼントを取り出した。 寝ている今なら、抵抗せずにつけられるに違いない。 原宿は、寝起きが悪いから。 ガサガサとプレゼントの包みを開けて準備していると、もぞもぞとまた原宿が動き だした。布団の中から、左手だけを出して、何か横をさぐっている。 ペタペタとシーツの上を触り、途中からむきになったようにもぞもぞと動き出した。 どうやら、隣で眠っていた俺をさがしているらしい。 俺は、プレゼントを右手にもって、もう一度ベッドの中に戻ると、原宿の左手を つかまえてやった。 原宿の動きが止まる。そして、布団ごと俺に近寄ると、むぎゅっ、と抱きついて きた。……いつもの原宿とは違う、考えられない甘えっぷりだ。 「みやもと………」 どうやら、思いっきり寝ぼけているらしい。 俺は、原宿の布団をそっとはぎとると、自分もその中にもぐりこんだ。 そして、寝ぼけてうにゃうにゃ言っている原宿の、首にそっとプレゼントをはめて やった。 「あ、やっぱり似合うな」 ベッドの枠に、もう一方をはめると、カシャンという金属音が響いた。 そして、抵抗がないのをいいことに、右手と左手も同じように拘束して、俺は原宿 が目覚めるのを待つことにした。 目が覚めたら、目隠しされて首輪つけられて、ベッドに拘束されている自分に びっくりするだろうか。それとも、怒るだろうか。 まぁ素直には喜ばないだろうけど、スキンシップやいじめられるのが大好きな 原宿は、多分誰よりも楽しんでくれるだろう。 怒る原宿の耳元に、「メリークリスマス、俺のクリスマスプレゼント」とでも 言ってやろう。そして、昨日食べそびれたパーティセットを、一緒に食べよう。 「あーん」とか言いながら、拘束されて身動きのとれない原宿に食べさせるなんて、 考えただけでワクワクする。思う存分イチャイチャしよう。 昨日相手してやれなかった分、一日中かわいがってやろう。 「みやもと……」 ニヘッとだらしなくゆるむ顔が、あと1時間もしない内に半泣きでゆがむんだろう な、と思うと、もうたまらなかった。 俺の名をつぶやく原宿の頭を、ゆっくりとなでてやる。サラサラした髪の毛は、 まるで子猫のようで、俺はその感触を楽しんだ。 しかし、俺の手の感触が嫌だったのか、原宿のゆるんだ顔が、少し強張る。 「たけだ…」 え、竹田? 「やだよ…たけだ……」 俺は、少し考え込んだ。原宿が、俺の手の感触を竹田と間違うなんて。 ふとテーブルの上を見ると、一切れ切り分けたケーキ。 そういえば、料理に手をつけずに待っていた原宿が、俺が泥酔して帰ったから って、自分だけケーキを切って食べるなんておかしい。…考えてみれば、昨日の 打ち上げのメンバーで、泥酔した俺を送って帰れるのは竹田ぐらいだ。 「原宿、そろそろ起きろよ」 俺は原宿の耳たぶにかみついて囁いた。 原宿は、うんうんいいながら、重いまぶたを持ち上げた。
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